漢詩詞新聞06 文化交流漢詩詞結社葛飾吟社 TopPage

平成6年の記事

H6-3/5
詠水仙花 二首             上海 陳 竹君
     一
鵝冠翠帯水中仙,落落幽懐頗自憐。安得憑花來引玉,清音妙句出雲箋。

           二
鵝冠(がかん) 翠帯(すいたい) 水中の仙 落落(らくらく)たる 幽懐 頗(すこぶ)る自憐
安(いずく)んぞ得ん 花に憑(よ)り 玉を引き來り 清音 妙句 雲箋(うんせん)に出ず

冰心玉骨歳寒姿,口角含芳女史詞。曙色霞シ風露細,簾前倩影夢中姫。

冰心(ひょうしん) 玉骨 歳寒(さいかん)の姿 口角 芳を含む 女史の詞(うた)
曙色(しょしょく) 霞シ(かひ) 風露 細かに 簾前の倩影(せんけい) 夢中の姫
霞シ(かひ) 霞模様の美しき衣服
倩影(せんけい) 色つやが美しい
落落(らくらく) 疎らで寂しい
雲箋(うんせん) 綺麗な便箋
水仙花 水仙の花
F中国人と日本人では、多少見方が違う点が勉強になる 

  H6-4/5
孤村野景               千葉 川上庄山
五月蒼天鯉幟翻,清風習習渉孤村。孤村静謚人何在,唯見肥牛点点蹲。

五月の蒼天 鯉()(しょく)(ひるが)へり 清風 習習として孤村を渉(わた)
孤村 静謚(せいいつ)
人 何(いず)くにか在る 唯だ見る 肥牛 点点と蹲(うずく)まるを
鯉(り)幟(しょく)
鯉のぼり
静謚(せいいつ) ひっそりとした様子
 野の牛はのんびりと、空には子供を慈しむ鯉のぼり、穏やかで生命に溢れた農村の風景。
F渉孤村 孤村静謚  リズムを取る為の高度な技法である。

 常盤平桜               千葉  山内雅道
十里桜花道,方知百選誉。送春人易酔,一陣舞紅裾。

十里 桜花の道 方(まさ)に知る百選の誉(ほまれ)
春を送り 人 酔い易く 一陣 紅裾(こうきょ)を舞はす

おぼろ月夜の春の宵 桜吹雪に誘われて
春を讃うる人の波 事なき御代の花の宴

6-5/8
三清山吟草 三首録一 玉京峰     南昌 胡 迎建
削出崚萬仭高,仙姑玉髻聳雲涛。却疑縹緲蓬莱境、稍遜此間一段豪。

 削り出す崚(しゅんそ) 萬仭の高さ、仙姑(せんこ)の玉髻(ぎょくけい) 雲涛(うんとう)に聳(そび)ゆ。却って疑う 縹緲(ひょうびょう)蓬莱(ほうらい)の境かと、稍遜(しょうそん) 此の間 一段の豪(ごう)。
崚 高く連なった峰 仙姑 仙女 玉髻 まるまげ 縹緲 広々
作者紹介 中国江西省南昌市 全球漢詩詩友聯盟総会 栄誉理事

詩縁                 上海 陳 竹君
浩蕩(とうとう)東風萬物榮、唐音玉韵譜(そらんじる)新声。
一衣帯水櫻花夢、中日詩縁繋(つなぐ)我情。

  穏やかな春風に皆な生き生きと、リズミカルな新曲をつい口ずさむ。
ほんの近くの櫻の便りと、日本との詩縁が私の情を繋いでくれる。

家居餞春               千葉 中山逍雀
村居階砌雨晴時、紫散紅飛芳草滋。枝上仍餘花數點、緑風一陣竟難支。     

村居 階砌(かいせつ) 雨晴る時、紫散じ紅飛び 芳草滋し。
枝上 仍餘(なおあます)す 花數點、緑風一陣 竟(つい)に支え難し。

6-6/3
有懐吉田素抱詩宗 上海 陳竹君
吉祥如意歳時新、田鋤筆耕純見眞。素志常懐中日誼、抱詩長嘯語j人。

吉祥は意の如く歳時新に、田鋤筆耕 純(もっぱら)眞を見る。
素志 常に中日の誼(よしみ)を懐い、詩を抱き長嘯す語jの人。

注 吉田素抱氏は選者の知人で四国高松の人 句の頭に吉田素抱の四字  を用い、遊びの一種 年賀にでも用いた詩であろう。

三清山吟草 三首録二 巨蟒女神石       南昌 胡迎建
巨蟒出山嶄嶄雄、興風作浪噬蒼穹。何来秀髪女神瞰、不許抛残修練功。

巨蟒(おろち) 山に出で嶄嶄(ぎぎ)として雄、風興(おこ)り浪を作(な)し蒼穹(おおぞら)を噬(かむ)。
何んぞ 秀髪の女神 瞰(かん)して来らん、許(ゆる)さ不(ず) 抛残(ほうざん)修練の功を。
瞰 大空より見下ろすさま  抛残 ほうっておく

擬涼州詞  千葉 外山翠華
山谷枕戈望九天、群狼吠月破浅眠。朔風吹断戎衣冷、転戦長征骨幾千。

矛に枕し 遥か故郷を夢うつつ、月に吠える狼に、仮の眠りも破られる。
北風に戎衣(いくさころも)も冷え冷えと、長の戦(いくさ)に骨幾千
注 涼州詞(王翰作)になぞらえての作品

6-7/7
次和逍雀詩家「家居餞春」原玉両首其一 上海 陳竹君
消魂莫過落花時、半捲湘簾粉汗滋。杜宇一聲春去也、愁紅惜白夢難支。

打ち沈むこと勿れ落花の時に 半ば簾を捲きしも汗にじみ出ず
不如帰の声聞けば春は去り 紅を愁い白を惜しむも春の夢支え難し
D 和韻と謂い、選者五月の作品に韻文字を揃え、内容を次いで創る漢詩 の応酬の作品。

火車将到韶關              南昌 胡迎建
霏霏飄風過江來、畳畳雲帷降九階。減速飆輪揺夢醒、千山矗矗一關開。

汽車は韶關に到る
靄立ち込め風吹く江を過ぎ来たれば 重なり合った雲の帷は垂れ込める
スピードが落ち揺れたのでふと目を覚ませば 其処には山々が高く聳え一つの境地が展開する

擬涼州詞其二  千葉 外山翠華
雲辺相喚雁飛還、吹笳微聞帯雪關。矛戟刀槍渾一夢、青熹シ月照皺顔。

雁は雲間に呼び合って帰るのに この私は、雪に埋もれた辺境の地で、誰が吹くのか、蘆笛を聞く
重ね重ねる戦は一体何だったのだろう 青く輝く半月は此の皺だらけの顔を照らし出す
雁は毎年故郷へ帰るのに、私は此処に何時まで留められるのか

9/11
次和逍雀詩家「家居餞春」原玉両首其二 上海 陳竹君
留春無計惜春残,奠酒一杯緑草滋。聽雨聽風紅倶N,芙蓉出水喜難支。

  留春 計無く 春残を惜しみ 奠酒一杯 緑草滋し
雨を聽き風を聽き 紅 倶にNせ 芙蓉 水を出で 喜び支え難し

  春來                 南昌 胡迎建
絲雨醸寒未減衣,開門敲句影形依。無聊只恐詩情滞,佇視天邊鴻雁飛。

  絲雨寒を醸して 未だ衣を減ぜず 門を開き句を敲き 影形依る
無聊只だ恐る 詩情の滞るを 佇みて 天邊に 鴻雁の飛ぶを視る
原作には、日本に無い文字を使用して居たので、文字を入れ替えた。

五重塔                松戸 外山翠華
偶訪招提境,老杉鳥聲柔。忘歸閑半日,奪目五重樓。

偶ま招提の境を訪へば 老杉の鳥聲柔かなり
歸を忘る閑かな半日 目を奪う五重樓  

10/1
常盤平夜桜詩和此         江蘇省徐州市 黄 新銘
素月半輪下,桜花獨歩紅。常吟詩友句,四面得春風。

  素月 半輪の下 桜花 獨り紅に歩す
常に吟ず 詩友の句 四面 春風を得たり
選者 常盤平夜桜の詩に和しての作品

常盤平夜桜     千葉 中山逍雀
邑閭暮景風猶冷 茂樹枝頭花已闌 秀萼千紅繆醉脚 香塵一白落晶盤
愛櫻歩燭江湖愉 扶老拏兒菽水歓 素月半輪春靄裏 艶歌數曲玉華壇

重訪桜桃溝一絶          江蘇省徐州市 黄 新銘
桜桃溝裏覓童年 渓水微波蕩小天  欲摘桜桃風又起 軽軽吹散夢中煙

桜桃溝裏に童年を覓(もと)め 渓水の微波 小天に蕩う
桜桃を摘んと欲すれば 風又起り 軽軽吹き散んじて 夢中に煙る
D 桜桃は桜と桃では無く、潅木の一種

  詠富士山一絶           江蘇省徐州市 黄 新銘
富士従来雪満頭 昂然東海照飛舟  千秋一把凌霽扇 q盡烽煙喚自由

D 冠雪の富士と水面に浮かぶ舟、一般的な富士の絵に和した作品。
D 作者は江蘇省詩詞協会理事 徐州市詩詞協会副会長

11/5
                   選者 中山逍雀
七言絶句 沈香亭 李白酔臥像    浙江省黄岩市 徐 中秋
長安酒肆酔青蓮 天子呼来不上船  豈譲文章供点綴 詩人鉄骨傲皇権

  長安の酒肆 青蓮に酔い、天子呼び来たれど船に上らず。
豈に文章点綴に供するを譲らんや、詩人の鉄骨皇権に傲る。

水調歌頭 西安華清池        浙江省黄岩市 徐 中秋
錦綉驪山の上。 瑞気瓊楼を繞る。
霓裳一曲曼舞すれば、贏(あまり)得て帝恩稠し。
玉砌の海棠は湯暖。浴罷め冰肌に香透る。
笑靨(しょうよう)一たび眸を回らせば。帳裏君が戯に任せ。天子風流足る。
温泉枯れ。情已に絶え。恨は悠悠。
馬巍の坡下に残月は冷照し鬼神は愁う。
唯ぞ有らん九龍の湖水、蕩漾として千年旧に依るを。
留め與る后人の游。功罪誰ぞ評説。幾箇の縁由を識らんや。

  D この作品は、「詞」と言い、リズミカルで情緒に富み、中国では盛ん に創られている詩形だが、日本人には多少の難しさが有るので、普及 していない。   紙面の都合で、原文は割愛させて戴きます。D 作者は浙江省黄岩市 黄岩詩詞学会主編
錦綉驪山上。 瑞気繞瓊楼。霓裳一曲曼舞贏得帝恩稠。玉砌海棠湯暖。浴罷冰肌香透。笑靨一回眸。帳裏任君戯。天子足風流。温泉枯。情已絶。恨悠悠。馬巍坡下残月冷照鬼神愁。唯有九龍湖水蕩漾千年依旧。留與后人游。功罪誰評説。幾箇識縁由。

H6-12/5
暮春贈将退位友人         広西省桂林市 唐甲元
花開花落両依依 紅痩緑肥自有時  柳底黄鴬知我意 怡然歓唱送春帰

  開き花落ち両ながら依依 紅痩せ緑肥え自から時有り
柳底の黄鴬 我が意を知らんや 怡然と歓唱して春帰を送らん
 作者は六六歳、其の友人であるから、恐らく退職する年齢であろう。
 艶やかな花も、遂には散る時が訪れる、老年が去れば、若人が立ち上がる、此も人生の定めか。
 此の現実に直面した何ともやりきれない気持ちを、誰が知って呉れようか、ままよ心を落ち着けて、友人を祝ってやろうではないか。

  漓江雨霽             広西省桂林市 唐甲元
群山如洗吐清芬 百里漓江不染塵   且喜三春風雨過 軽舟一葉釣流雲

   桂林は日本人が行く観光名所の一つである。
 雨上がりの桂林の山々は、空気が澄み切って爽やかで、百里の流れも塵一つ感じられない。
 更に喜ばしいことは、春の間の雨風も過ぎ去って、私の乗った小舟が流れる雲に釣れる事だ。
作者は広西省桂林 桂林詩詞楹聯学会編集主任