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後入先出

54こほろぎが生きをるこゑをよびかはす
橋本多佳子

53熟れ茱萸や馬台帳の捲れぐせ
高田廣稲子

52雨乞いの双幅とただ伝へらる
高野素十

51彎曲し火傷し爆心地のマラソン
金子兜太

50夜明けまで雨吹く中や二つ星
内藤丈草

49もろどりの山深くゐて鑑真忌
矢島渚男

48 原稿未着

47中空にとまらんとする落花かな
中村汀女

46白き巨船来たれり春は遠からじ
大野林火

45枯野ゆく鳴りを鎮めし楽器箱
平畑静塔

44世の中に馴れぬごまめの形かな
正岡子規

43大みそか定めなき世の定めかな
西 鶴

42鶴啼くやわが身のこゑと思ふまで
鍵和田釉子

41秋袷育ちがものをいひにけり
久保田万太郎

40芭蕉野分して盥に雨を聞夜哉
芭蕉

39炎天へ打って出るべく茶漬飯
川崎展宏

38心太さかしまに銀河三千尺
蕪 村

37高嶺星蚕飼の村は寝しづまり
水原秋桜子

36海市消え買物籠の中に貝
中嶋秀子

35磨崖佛おおむらさきを放ちけり
黒田杏子

34春寒やセエヌのかもめ目ぞ荒き 小池文子

33雪は静かにゆたかにはやし屍室
石田波郷

32家なしも江戸の元日したりけり
一 茶

31冬蜂の死にどころなく歩きけり
村上鬼城

30風かなし夜々に欠けゆく月の形
暁 台

29飢せまる日もかぎりなき帰燕かな
加藤楸邨

28海に出て木枯帰るところなし
山口誓子

27芋の露連山影を正しうす
飯田蛇笏

26夾竹桃河は疲れを溜めて流れ
有働 亨

25さくら実にもう誰のでもない羽毛
和地喜八

24鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし
杉田鷹女

23湖畔に泊す春夢に西施現れよとて
宇咲冬男

22少年や六十年後の春の如し
永田耕衣

21窓の雪女体にて湯をあふれしむ
桂 信子

20十匹の猫も座を占め大旦
佐藤和夫

19除夜の妻白鳥のごと湯浴みをり
森 澄雄

18名月や君かねてより寝ぬ病
炭 太祗

17いつも追はれ今はたはたを野路に追ふ
福田蓼汀

16蚊を焼くや褒似が閨の私語
其 角

15瀧の上に水現れて落ちにけり
後藤夜半

14こひ死なば我塚でなけほと丶ぎす
遊女奥州

13みほとけの千手犇く五月闇
能村登四郎

12チチポポと鼓打たふよ花月夜
松本たかし

11船頭の耳の遠さよ桃の花
支 考

10梅二月光は風とともにあり
西島麦南

09去年今年貫く棒の如きもの
高浜虚子

08歳末の旅の夜明けの火の見の灯
田川飛旅子

07愛蔵す東籬の詩あり菊枕
杉田久女

06頬杖に深き秋思の観世音
高橋淡路女

05朝顔や重たしと露揺りこぼす 李 芒

04行き行きて倒れ伏すとも萩の原 曾 良

03萬緑の中や吾子の歯生え初むる
中村草田男

02ひと籃の暑さ照りけり巴旦杏
芥川龍之介

01あるときは船より高き卯浪かな
鈴木真砂女