漢詩詞同人誌22年7-9 文化交流漢詩詞結社葛飾吟社

2010-7

7月号

          詩 詞


         朱夏即事退休有感     千葉県 田旭翠

             其 一

  弊衣不厭不憂貧,七秩無功白髪新。陋屋加餐一生足,小斎談笑百花親。
  難期世路先安住,可恨年華伴老身。庭樹成陰風弄影,殷勤燕語餞徂春。

             其 二

  新葉如潮緑満窗,樹陰似水暗涼通。日長庭上看時変,夜短灯前愍老衷。
  獨喜晴耕天籟爽,又知雨読歳時豊。浮生回首向誰語,応得等閑一実功。

   (註)道元禅師「贈?秀才」詩曰“独坐縄牀口掛壁,等閑一実勝千虚”


      懐希臘争乱           千葉県 今田莵庵  

  希臘陶瓶誘旧懐,購之往歳故丘街。今聞国政傾瀕死。古代英知何不偕。
     (註)希臘=Greece。

      祝岡義実画伯画廊開扉于茅崎   千葉県 今田莵庵

  多年法国写烟花,作品得留常住家。望海茅崎温暖地,遠来客悦景勝加。
     (註)法国=France。

      山口登美子女史賜煮筍。謝之。  千葉県 今田莵庵

  清明已了又酸寒,老境荊妻煙火難。煮筍携来隣近友,芳香椒味覚春闌。

    聞坂口明子女史経験,有感。   千葉県 今田莵庵

  嬋娟互認住方違,地鉄月台交語帰。知得整然車走逆,戻来馳想友人譏。
     (註)地鉄=地下鉄。月台= Platform。



      小川葉子女史賜我豌豆。是元埋蔵圖担□蒙陵墓。
      今春播之于我庭,已幾多開花了。 千葉県 今田莵庵

  三千四百歳前豌,圖担□蒙倶宿棺。播土萌芽紅紫夥,今知埃及古人歓。
     (註)圖担□蒙=Tutankahmen。埃及=Egypt。□=上+下。


      女兒滿周歳生日寄甚平回國    千葉県 陳 興

  可愛甚平服,印櫻桃與花。寄時先不説,滋滋喜到家。

      製冰機             千葉県 陳 興

  冰塊堆如石,淺深難得知。勸君休苦想,謎底有開時。


      老夫同窓会           千葉県 高橋香雪

  飛泉落下聴渓声,江上暗蛍滅又明。竹馬交情今日集,老夫揮涙泉館情。

      水郷賞花            千葉県 高橋香雪

  東西南北水泱泱,紫白菖蒲誇麗粧。少女棹歌年二八,垂楊倒影客思郷。


    西班牙安達羅斯(Andalucia)巡遊二首 神奈川県 萩原艸禾

      其一 白壁連丘

  蒼天雲遠嘆驕陽,緑蔭探巾斜径傍。白壁皚皚映眸耀,紅花楚楚揺風香。

      其二 橄欖(Olive)覆山

  千樹折腰蟠石礫,百年刻皺立荒丘。初思満目涸乾地,橄欖将生滴滴油。




     連続名所旧跡 古詩新韻      東京都 池田耕堂

       代々木八幡宮        渋谷区代々木
     = 古風な神社建築の社殿と古代遺跡=

 高台斎杜緑林繁,都会喧噪斯不伝。古風本殿趣無限,素朴諸社真寂然。
 昔人由夢得宝鏡,創建草祠八百年。縄文遺跡存清 境,不変情致聊自歓。

       氷 川 丸         横浜市山下公園
    = 数奇な運命を辿った戦前の豪華客船 =

 港街瀟洒趣偏幽,異国情緒随処留。豪華客船終使命,優美姿態停埠頭。
 “美国”航路衆憧憬,名士乗船為外遊。戦中暫時成病院,戦后復員帰還稠。
 激動時代宏活躍,数寄運命生暗愁。

       十一ヶ寺霊場        練馬区練馬
    = 徳川氏所縁の寺院群 =

 参路両傍寺院連,紅花遠近共争妍。道辺地蔵珍聞有,正面観音殊興牽。
 屡起災火促移転,整然霊地感動寛。荘厳石塔語高位,優雅情趣賞嘆専。

       花園神社与錦?渓谷     茨城県北茨城市
    = 坂上田村麻呂の創建した神社 =

 常磐連嶂緑陰稠,錦繍渓谷鳴急流。壮観朱門感無限,千古社殿風物幽。
 石楠群落彩初夏,紅葉山野燃晩秋。巨杉林間昼猶暗,深澗探勝忘百憂。

       五浦海岸          茨城県北茨城市大津町
    = 岡倉天心・横山大観 所縁の地 =

 常磐山野共含情,五浦海浜風物清。六角朱堂看不尽,断崖松影興無窮。
 “天心”創設美術宇,”大観”研鑽?朋侶。温泉絶景癒心身,新鮮魚介誘行旅。


      偶 感             東京都 田村星舟

  郊遊盡日萬花中,胡蝶翩翩望不窮。七秩人生眞一夢,陽巡星轉孰時終。

      荷花偶成            東京都 田村星舟

  池邊遊歩彩虹生,荷氣移衣朱夏盛。恰好蝶蜂花上息,風懷猶餘未詩情。

      仲 夏             東京都 田村星舟

        其 一

  梔子模糊白,階前香氣流。黙然仰星漢,白髪洗閑愁。

        其 二

  風起晩涼催,雷公去又來。獨凭疎簾下,花電積憂開。


      烏有先生            東京都 石倉鮟鱇

  烏有先生有羽毛,乘風萬里舞飄飄。散樗如此長空想,鼾睡涼陰夢舊巣。

      世界俳句凌邊疆         東京都 石倉鮟鱇

  世態人情攻細瑕,界疆培養井中蛙。俳人隨處競和語,句眼炯然如眼花。

      夏日即事            東京都 石倉鮟鱇

  碧落火雲涌,緑陰涼意添。音書辯平仄,壺酒洗蒸炎。
  人作蒼蠅舐,氷如白璧霑。蛞蝓爬臉面,筆跡夢中粘。

      蠅頭蝸角            東京都 石倉鮟鱇

  散官無事老東瀛,乞骨歸郷擅講評:賈客蠅頭獵微利,俳人蝸角競虚名。
  皇都喧噪詩材匱,辺土寛閑氣韵盈。曳杖尋幽坐涼蔭,吟魂獨對夕陽平。


      游手偸閑            東京都 石倉鮟鱇

  天下安寧有鳳雛,生涯俟命坐虚無。修徳學道輕私利,游手偸閑爲酒徒。
  偏愛清貧求景致,頻耽雅韻枕音書。閑居僻處揮詩筆,但賞山光老草廬。

      閑鴎野鷺            東京都 石倉鮟鱇

  人愛清貧遠日邊,本無使命欲通仙。閑鴎野鷺揮詩筆,野草閑花生錦箋。
  夢裡茅廬爲酒館,杯中玉液洗瘋癲。千紅萬紫皆人面,花貌相爭百媚妍。

      浪酒閑茶            東京都 石倉鮟鱇

  人學韻事已十年,偏愛清貧佯散仙。浪酒閑茶洗塵意,清辞麗句彙詩箋。
  花容含笑陪白首,鳳字飛聲仰碧天。夢醒三更山月皓,老殘聽取一鳴蝉。

      夢逢仙女            東京都 石倉鮟鱇

  詩翁磨墨筆頭香,將染紅箋生夜涼。夢裡花容含笑勸,月中雲液使人狂。
  游魂乘興浮秋水,得句搖唇坐野航。耿耿銀河流萬里,更傾玉盞想高唐。

      心舒氣暢            東京都 石倉鮟鱇

  老殘曳杖探山光,笑入櫻雲傾玉觴。風軟花芳醇酒美,心舒氣暢醉生長。
  游魂乘興求詩句,厭舊憐新披錦嚢。得句聳肩誇器量,飛聲十里對夕陽。

      心蕩神搖            東京都 石倉鮟鱇

  仙娥媚笑侑金觴,美禄千鍾洗腎腸。心蕩神搖人酩酊,天高地厚月清涼。
  游魂有意聲無病,雅韵含情詩擬唐。夢醒寒齋案机上,埀涎如墨冩辭章。

      心長力短            東京都 石倉鮟鱇

  赤羽依山讓銀兎,白頭傾酒擅金杯。心長力短論今古,鶴短鳬長無是非。
  求句十年禿筆健,染箋百次美辭悲。枕肱瞑目游天外,夢醒黄泉洗死灰。

      心寒胆戰            東京都 石倉鮟鱇

  頻作飲徒游睡郷,夢逢仙女點華妝。昊天銀月臨花界,樓上紅唇吐酒香。
  風軟人妖誘白首,心寒胆戰落金觴。無端子夜醒蛩雨,目送歸雲窗外翔。

      楚天風雨            東京都 石倉鮟鱇

  楚天風雨巻銀河,織婦難航高棹歌。萬里破濤求伴侶,遥思良夜月光多。

      霞友雲朋            東京都 石倉鮟鱇

  西峰霞友隱茅舎,北嶺雲朋陪酒徒。傾盞游魂待銀兎,擬唐吟句送金烏。

      玉走金飛            東京都 石倉鮟鱇

  玉走金飛留酒觴。白頭朱臉易愁傷。生涯一夢無功譽,短夜猿啼人斷腸。

      卵覆鳥飛            東京都 石倉鮟鱇

  天高人老杯無酒,卵覆鳥飛詩有情。回憶生涯多悔恨,吟喉空健競鶯聲。

      忙中有錯            東京都 石倉鮟鱇

  忙中有錯自責多,歸路垂頭逢酒魔。好友情温性開朗,傾聽絮語勸杯過。

      忙裡偸閑            東京都 石倉鮟鱇

  忙裡偸閑佯散仙,大椿緑蔭暫吸烟。善哉山鬼賣詩料,人似幽禽吟碧天。

      閉門覓句            東京都 石倉鮟鱇

  銀蟾憐憫蠧魚愚,閉門覓句老山居。菲才十歳學詩韻,未就秀吟長虎鬚。

      鈎章棘句            東京都 石倉鮟鱇

  詩叟禿毫誇瓦全,鈎章棘句走雲箋。酒香濃處半天月,清照光頭耐永年。

      尋章摘句            東京都 石倉鮟鱇

  俳人山隱坐寒齋,傾酒游魂笑口開。乘興時繙歳時記,尋章摘句補詩才。

      錦嚢佳句            東京都 石倉鮟鱇

  麟子學詩通雅韻,鳳雛揮筆擅虚文。錦嚢佳句如珠玉,不朽秀吟驚鬼神。


      貧病交侵            東京都 石倉鮟鱇

  散人愁嘆仰蒼穹,貧病交侵詩未工。賣掉胡琴買壺酒,頻得好句醉顔紅。

      無病呻吟            東京都 石倉鮟鱇

  善哉酵母養俳人,無病呻吟爲酒貧。求句生涯探山水,醉吟古道憶青春。

      酒病花愁            東京都 石倉鮟鱇

  鳳雛酒病爲詩客,麟子花愁老泰平。臥治百年民鼓腹,春来黄鳥五山鳴。

      變化不測            東京都 石倉鮟鱇

  鳳雛成長作園吏,麟子上京爲賭徒。變化古来眞不測,愚生晩境作迂儒。

      變俗易教            東京都 石倉鮟鱇

  酒虎修徳説樂郊,變俗易教作花猫。游魂午睡夜鳴處,悦目銀蟾山頂高。

      手忙脚乱            東京都 石倉鮟鱇

  詩魔賣酒洗凡愚,章句小儒爲蠧魚。手忙脚亂游辭海,夢想飛泉懸尾閭。

      游手偸閑            東京都 石倉鮟鱇

  鳳雛學道愛清貧,游手偸閑爲散人。天下泰平無使命,讀書延壽老山村。

      心閑手敏            東京都 石倉鮟鱇

  禿筆通靈含墨頻,心閑手敏冩詩新。白頭如此擅清韻,兎角龜毛帶酒醇。

      心煩慮亂            東京都 石倉鮟鱇

  野叟再讀回信酸,心煩慮亂醉顔丹。更傾悶酒思孀婦,月寡人鰥蛩雨寒。



      千言萬語            東京都 石倉鮟鱇

  時有天書養蠧魚,千言萬語善充虚。晩年十載學詩韵,畢竟醉迷山水娯。

      千回萬轉            東京都 石倉鮟鱇

  翁媼同行山水游,七舌八嘴競吟喉。千回萬轉推敲好,俳句四時堪探求。

      千山萬水            東京都 石倉鮟鱇

  人踏千山萬水遙,行吟曳杖到虹橋。笑揮禿筆冩俳句,仍舊傾杯爲酒豪。

      千思萬想            東京都 石倉鮟鱇

  散士多閑剩雅才,千思萬想老寒齋。十年裁詩交紅友,珍重音書不散財。

      千難萬險            東京都 石倉鮟鱇

  帶酒詩魔笑貌妍,千難萬險醉翁前。隨風比翼雙飛處,鳳字成章在錦箋。

      千愁萬恨            東京都 石倉鮟鱇

  月夜詩魔陪醉翁,千愁萬恨涌胸中。無言磨墨試揮筆,自走紅箋讚酒功。

      眠思夢想            東京都 石倉鮟鱇

  騷客求詩擅酒觴,眠思夢想未凝章。醒来窗外仰明月,銀兎閑中掏耳忙。

      胡思亂想            東京都 石倉鮟鱇

  人求風韵探仙郷,裁賦百年傾玉觴。美酒千鍾盡金盞,胡思亂想滿詩嚢。

      綺思艷想            東京都 石倉鮟鱇

  孀婦花容驚鬼神,綺思艷想害詩人。情書無效有禿筆,快走紅箋生韵文。



      行思坐想            東京都 石倉鮟鱇

  老作俳人隱故郷,頻交山鬼賣風光。行思坐想求佳句,時有酒家傾玉觴。

      游思妄想            東京都 石倉鮟鱇

  未顧菲才傾酒觴,游思妄想滿詩嚢。行吟四季無思慮,春賞櫻雲秋月光。

      触景生情            東京都 石倉鮟鱇

  老學俳句愛風流,曳杖山中頻勝游。触景生情競幽鳥,飛聲十里立清秋。

      見景生情            東京都 石倉鮟鱇

  人無世事擅閑暇,曳杖尋幽餐夕霞。見景生情一俳句,將驚山鬼賣烟花。

      即景生情            東京都 石倉鮟鱇

  浮舟湖上碧山隣,翠浪盈盈浮火雲。即景生情案俳句,白頭午飲帶微醺。

      撫景傷情            東京都 石倉鮟鱇

  老殘曳杖似金仙,撫景傷情坐碧山。俳句堪求對斜日,季題多處聳吟肩。

      揆理度情            東京都 石倉鮟鱇

  詩魔有意坐秋風,揆理度情陪醉翁。才短豪紳多酒友,贊揚俳句美辭豐。

      睹景傷情            東京都 石倉鮟鱇

  俳人邊土憶京都,睹景傷情作酒徒。彩筆無功連鳳字,埀涎酒店忘歸途。

      不徇私情            東京都 石倉鮟鱇

  鳳雛生長仕東宮,不徇私情勤奉公。天下泰平無一事,老爲醉客漫矜功。

 

 

2010.8ml月

平成22年8月號



      十六字令・人 十五首      東京都 石倉鮟鱇

  人,健歩如飛遶大椿。耽空想,俳句擅花春。

  人,同病相憐對酌頻。乘酣興,高唱倒金樽。

  人,無病呻吟擅醉魂。傾金盞,緑酒洗黄塵。

  人,談是説非老古津。夕陽照,流水洗江濱。

  人,一蹴而成得句頻,揮俳筆,胸裡涌青雲。

  人,心血来潮醒醉魂。揮禿筆,含墨冩奇文。

  人,日飲無何擅醉魂。埀涎好,蝶夢遶金樽。

  人,日下無双詩嶄新。吟花底,飛聲驚鬼神。

  人,触景傷情吟句頻。山光好,千里間紅塵。

  人,見景生情交谷神。得俳句,天下一游民。

  人,劍胆琴心驚鬼神。揮刀筆,唱義斬奸頻。

  人,吐胆傾心鼓醉魂。傾金盞,朱臉擅青春。

  人,吊胆驚心逢鬼神。花容笑,皓齒咬詩魂。

  人,合胆同心擅醉魂。游花底,朱臉倒金樽。

  人,信口興妖作怪頻。佯詩鬼,厭舊句憐新。




      十六字令・酒 二首       東京都 石倉鮟鱇

  觴,招是生非害酒狂。催別涙,獨飲醉呶長。

  杯,心到神知月下飛。思孀婦,白首更傷悲。

      十六字令・翁 三首       東京都 石倉鮟鱇

  翁,談是説非飛數聲。乘吟興,又似晩烏鳴。

  翁,有始無終醉墨東。求俳句,畢竟似吟蛩。

  翁,筆底奇思妙想生。天仙舞,翻袖擅春風。

      竹枝・泥船渡河         東京都 石倉鮟鱇

  蓬莱民意是如何,泥船一億渡山河。

      竹枝・變俗易教         東京都 石倉鮟鱇

  大都酒虎化花猫,變俗易教講詩騷。

      少年游・多愁善病        東京都 石倉鮟鱇

  多愁善病,少條失教,人老作詩豪。飲酒千鍾,游魂萬里,隨處賣錢刀。
  禿毫冩、錦嚢佳句,聲價碧城高。醉列群仙,忘歸茅舎,白骨在秋皐。

  黄昏金盞,白頭朱臉,銀月上青天。多愁善病,少條失教,樗散有詩箋。
  餐霞飲景揮禿筆,吟句欲登仙。裁雲剪水游魂擅,錦嚢句、羽人肝。

  多愁善病,心灰意冷,詩客有金觴。蝸角虚名,蠅頭微利,煩惱妄悲傷。
  揮禿筆、善含香墨,張翼欲高翔。鳳舞龍飛,舒情含景,裁賦擬中唐。



 

2010 22 9

 

9月号

 


          短 詩


      曄歌・三首 泊泉館       千葉県 高橋香雪

  友情親。一夕交歓,喜色新。

  夜気清。江上暗蛍,滅又明。

      曄歌・三首           千葉県 高橋香雪

  立橋頭。清爽白蓮,水悠悠。

  櫓声鳴。舟遊一刻,江上行。

  緑陰中。禅寺幽庭,数点紅。


      曄歌・恋雨 三首        神奈川県 萩原艸禾

  夕陽催。旱雲忘雨,空遠雷。

  瘠胡瓜,恨乾旱留。莫自羞。

  炎日長。撒水一庭,風僅涼。


      曄歌・三 首          東京都 田村星舟

  啜茗時。窓前點點,柚花開。

  湖水明。翠柳垂垂,朝露生。

  月團團。盛暑天心,俗氛洗。


      俳句與曄歌           東京都 田村星舟

  誰が畑穫りのこされし蕃茄真赤
  誰田地。収剩蕃茄,一鮮紅。


      七字押韻俳句          東京都 石倉鮟鱇

  玉走金飛人老悲。        玉が走り金が飛びゆき人が老ゆ

  銀蟾憐憫客中枕。        銀蟾に憐憫されて旅枕

  睹景傷情句寫生。        景を見て情を傷めし句は写生

      八字押韻俳句          東京都 石倉鮟鱇

  碑,補過飾非辭藻黴。      碑や過ち飾る美辞に黴

      十字押韻俳句          東京都 石倉鮟鱇

  詩魂張翼向台灣,月明天。    台灣へ詩魂飛びゆく月の中。

      十字押韻短歌          東京都 石倉鮟鱇

  貧病交侵賣月琴,雨洗襟。
  貧しさと病にこもごも侵されて雨に洗われ月琴を売る

      十一字押韻短歌         東京都 石倉鮟鱇

  卵覆鳥飛,樽倒酒流空玉杯。
  卵ころげて鳥は飛び樽倒れれば酒流れ空しき玉杯

  忙裡偸閑,大椿緑蔭暫吸烟。
  忙中に閑を偸んで大椿の緑陰に吸う暫時の煙草


      十二字押韻短歌         東京都 石倉鮟鱇

  民意是如何,泥船一億渡山河
  民意とはいかなるものぞ泥船の一億が渡る山と河と

  足球相破竹,龍騰虎蹴共馳突。
  サッカーはたがいに破竹 龍は騰り虎は蹴ってともに馳突す

  人老但傷悲,玉走金飛留酒杯。
  人老いてただに傷悲す玉が走り金が飛びゆき酒杯が残る

  無慾有琴書,千辛萬苦晩年枯。
  慾がなく琴書があれば千辛も萬苦も枯れる晩年である

  銀蟾憐蠧魚,閉門覓句老山居。
  銀蟾が憐れむ蠧魚は門を閉じ句をばもとめて老いゆく山居

  山人迂世情,霞友雲朋遶草亭。
  山人は世情にうとく霞友あり雲朋ありて草亭を遶る

  詩叟通聲律,錦嚢佳句如珠玉。
  声律に通じし詩叟の錦?に佳句は珠玉のごとくなりけり

  人繙歳時記,尋章摘句補才藝。
  歳時記をひもとく人や章を尋ね句を摘み才と藝を補う

  歸途逢酒魔,忙中有錯醉呶多。
  帰り道に酒魔に逢う忙中にとかく失敗ありて酔呶多し

  王孫無酒錢,游手偸閑詩有權。
  王孫に酒銭なくとも手は遊び閑を偸めば詩には権あり

  詩人把酒杯,健歩如飛而忘歸。
  杯をつかんで詩人の健歩すれば飛ぶがごとくに帰るを忘れ

  人嘆仰蒼穹,貧病交攻詩未工。
  蒼穹を仰いで嘆かん貧と病にこもごも攻められ詩は工ならずと。 


(承前)

  風人賣月琴,貧病交侵涙洗襟。
  月琴を風人売れり貧と病にこもごも侵され涙襟を洗う

  俳人易忘歸,健歩如飛追落暉。
  俳人は帰るを忘れ易きかな健歩飛ぶごと落暉を追へり

  詩客老猶求,酒病花愁吟不休。
  老いてなお詩客は求む酒に病み花に愁いて吟じ休まず

  酒店兩遺賢,同病相憐醉語酸。
  遺賢あり酒店に病を同じくしあい憐れんで醉語酸たり

  花唇擅美言,敬老尊賢隣酒仙。
  花唇ありほしいままに美言して敬老尊賢 酒仙の隣

  才媛絳唇談:古聖先賢多美男。
  才媛の絳き唇談ずるに古聖先賢美男多しと

  詩客愛飛聲,多愁善病殉神情。
  詩に声を飛ばすを愛し愁多く病みてはよく神情に殉ず

  詩人説勝游,酒病花愁害不休。
  勝遊を詩人は説けり酒に病み花に愁へば害休まずと。

  酵母養俳人,無病呻吟老水村。
  酵母やしなう俳人は呻吟に病なくして水村に老ゆ

  京城有九衡,變動不居爲癈墟。
  京城に九衡あるも休みなき変化についに廃墟となれり

  酒虎化花猫,變俗易教講詩騷。
  三毛猫となりし酒虎あり俗を変へ教へを易へて詩騷を講ず

  美酒盡空觴,變幻無常覺感傷。
  美酒尽きて杯は空 変幻の無常を覚え感を傷めり


(承前)

  英賢斷病根,厭舊憐新勤子民。
  英賢は病根を断て旧を厭ひ新を憐れみ勤しめ子民

  吟詩似午鷄,烟霞痼疾使人迷。
  詩を吟じ午鶏に似たり人をして迷はしめたり烟霞の痼疾

  白頭擅酒杯。談是説非朱臉輝。
  杯をほしいままにし白頭は紅い顔して閑話に興ず

  千年雨洗碑,補過飾非辭藻黴。
  千年の雨が洗へる碑の補過飾非の辞藻の黴よ

  花言酒店飛,口是心非人巧陪。
  酒店では心は非でも口は是と花言を飛ばし陪して巧み

  商人作蠧魚,千言萬語澱泥淤。
  商人も蠧魚となるべし淤泥となり千言萬語の澱みに在らば

  讀書聽緑雨,千言萬語堪悦豫。
  書を読むに緑に降れる雨を聴けば千言萬語悦ぶに堪ふ

  美禄洗詩魂,千愁萬恨酒家屯。
  美禄あり詩の魂を洗ふゆえ千愁萬恨 酒家にたむろす

  詩魔變幻才,千姿萬態作題材。
  変幻の才ある詩魔に千姿あり萬態ありて題材となる

      十三字押韻短歌         東京都 石倉鮟鱇

  老板収拾玉杯,水盡鵞飛酒客歸。
  玉杯を亭主は片す水尽きて鵞鳥飛びゆき酒客ら帰る

  詩魔贊美拙吟,有口無心彈竪琴。
  拙吟を詩魔は贊美し口あるも心なきかに竪琴を弾く



         葛飾吟社 退会の辞

                          中山逍雀


 私は予てより、漢詩詞活動を25年65歳までと決めていた。そのときになったら辞めようと思っていたが、愚図愚図してしまい、現在既に30年70歳で有る。
 私は3月生まれだから、2月なら30年70歳で有る。来月になると、71歳に成ってしまうので、意を決し無理突飛を言って、2月限りで、葛飾吟社を脱会した。

 今はとても気分がよい。気分爽快である。

 ただ予定より5年遅れてしまい、漢詩詞の次に、何かを為そうと思っているが、時間が短くなったことには悔いが残る。

 まずは身辺整理に着手しなければ成るまい。

 財物も未整理があるので、整理に着手する。

 漢詩詞講座の改訂版の上梓が有る。
 新版も執筆しなければ成るまい。

 中国の詩友全員に挨拶状を出して、今后とも葛飾吟社後継諸兄との友誼を頼んでおこう。
 
 それが片付いたら、もう一つ何かを手がけよう!


 散歩途中の近所に、数人の漢詩詞好きな御仁が居る。散歩の途中だから暫くは漢詩詞のお付き合いを為そうと思っている。

 ただ曄歌は根付くまで100年を要する事業だから、息の続く限り続ける積もりである。

 葛飾吟社会員諸賢は、日本国内の漢詩詞環境に安堵し慢心して、国際評価させる努力を怠ることがないように、心懸けて戴きたい。
 日本国内漢詩壇で評価されても、中華詩詞壇では評価されるとは限らないことを知らねばならない。

 多くの中国人は、余程気心が知れた相手でなければ、作品に対して巧拙を問はず必ず褒めて、真の評価を為すことはしない。
 此で褒められたと勘違いする日本人が実に多いのである。諸君はこの現実を辨えなければならない。

 中華詩詞壇で評価されなければ、如何に国内評価があっても、国際的見地からその価値は無いに等しい。
 諸君が道筋さえ通せば、中国の多くの詩詞壇で、諸君を受け入れてくれる。
 その様な環境は既に私が作ってあるので、諸君の努力がその正否を決める。

 漢詩詞愛好者各位の御健吟を祈る。

   平成22年2月
                      中山逍雀 頓首 

追伸(平成22年7月)
  旧作が漢詩詞作品コンクールにおいて銀賞を獲得しました。



     慶祝香港回帰栄誉賞銀賞を受賞して
                           中山逍雀


 表彰した団体が私の全く知らぬ処なので10年経ってやっと受賞者の手元に届けられました。

 何処をどう回ってきたのか?13年目に香港回帰の漢詩作品銀賞受賞の表彰状が届いた。

 黒龍江省の詩友、唐鳳寛先生が、私用で日本に来た。そのついでに持参してくれた。
 「此は中山さんの賞状では有りませんか?」

 私は投稿した覚えもないし(余りに古いことで記憶にありません)、ましてや展示会開催の事実も知らない。ただ中国の詩詞壇では、展示に値する作品を目すると、主催者が展示に参加させるようである。
 私の知らぬ間に、作品コンクールに参加していたことは珍しい事ではないが、13年も彷徨っていた銀賞は初めてだ!

 漢詩詞の創作指導をしていて、自分の創作能力が如何ほどか?・・・・此は指導者として何時も気に掛けていることである。
 私の場合は、作品が先方の機関誌に掲載されることを作品評価の第一段階の証としていた。
 義理で載せる場合が多いので、載せられたから巧いとは限らない。

 その次に、機関誌の中で、佳作選に載せられることである。
 選び出されたと言う事実は、中国人の作品と比較されて、遜色ないから載せられた!と思って差し支え有るまい。
 毎月投稿しているわけではないので、割合は解らないが、時折に佳作選に載ることはある。


 その次に、佳作評論の対象に成ることである。
 30年の歳月で、十数度はある。

 此までは、投稿した機関誌内だけのことである。

 次に投稿した覚えのない機関誌に掲載されることである。
 機関誌の編集者が他の機関誌に掲載されていた作品を見て、参考作品として取り入れる場合である。
 見覚えのない機関誌が送られてくることは、年に数度はある。
 中国では他人の作品を掲載すると、著作料の代わりに、掲載誌を一冊送ってくる習慣である。
 日本のように、掲載料を取ることはしない。
 中国には地方紙や専門紙がとても多い。依って詩詞聯の専門紙には、機関誌から抽出されて載ることはある。

 次にコンクールの選で、選に入って○○賞を獲得することである。
 等級段階は日本と同じで、金 銀 ・・・・と選ばれる。
 投稿するのに、日本では参加費用が必要だが、中国では必要ないようだ!
 掲載誌の代金と郵送料を必要とする場合はある

 私の場合は寄稿要請の案内を見て、投稿した記憶があり、数度は○○賞を受賞したことはある。
 応募総数が数百通で、当然のことだが、全員が中国人で、各自練りに練った作品を投稿してくるのだから、入選して、○○賞を獲得することでも、至難のことである。

 今回は、投稿した記憶もないのに、銀賞とは、自分の実力が認められたと、嬉しい限りである。
 ただこの作品は、知らない機関誌に載ることや、地方新聞や専門紙に載ることも幾度かあって、中国国内でそれなりに評価されていたことは事実である。