漢詩詞創作講座初心者11 文化交流漢詩詞結社葛飾吟社 TopPage

現代韻か平水韻か?

 前章までの例でお解り頂けたかと思いますが、絶句で脚韻を踏むのは起句、承句、合句(結句)で、転句は韻字と反対の平仄がとられます。平韻の場合は仄字となります。

 韻の話をすると面倒臭くなるのですが、平韻や仄韻、平起こし、仄起こしなどが出てくる以上、この辺でどうしても韻の話をしておかねばならないでしょう。

 (3)で現代韻は16平韻、平水韻は30平韻ということを書きました。これだけから見ると、現代韻の方が分類が少なく楽であり、現代北京語を学んだ者にとって合理的であると思えます。中国語をマスターした方は、現代韻を使うことをお薦めします。

 しかしあまり中国語に堪能でない場合は、古典韻(平水韻)の方がいいかも知れません。というのは、現代韻(北京新韻)というのは、現代北京語の発音で組み立てたものですが、前にも話したように北京語が中国全土で話されているわけではありません。北京語、上海語、広東語等の間では、通訳をつけないと話は通じません。広東語は四声ではなく八声あり、福建省の潮州語は九声あるということです。それほど異なるとすれば、現代韻が万能というわけには行きません。そこで中華詩詞学会では、外国人は古典韻使用を原則としています。ここで外国人といっているのは、日本人や韓国人は当然外国人ですが、中国国籍を持っていても、モンゴル人やチベット人や満族、あるいは回教徒の少数民族などは、言語の点からいえば外国人に等しいわけです。そういう民族はたとえ字は読めても発音はできません。つまり日本人と同じことになるのです。

 もう一つ日本人にとって古典韻が便利なのは、日本で出ている詩語表などの参考書が古典韻で作られているからです。今後北京語をマスターする人が増えて来ると、いずれ北京新韻による詩語表なども刊行されてくると思いますが、今のところ出ていません。従って当面古典韻を使用されるのがいいでしょう。古典韻の韻表は、例えば太刀掛呂山の「だれにでもできる漢詩の作り方」の27頁に掲載されていますのでご覧下さい。

 この表でお解りの通り、韻の分類は平声(通常平韻といっているもの)30、上声29、去声30、入声17の合計106韻に分類されています。そして通韻として大枠が示されています。そして古詩では通韻が許されていると説明されています。その通りですが、現実には現代中国では絶句などの新体についても日本ほどうるさくいわないようです。脚韻・平仄とも、中国語のニュアンスが解らない我々日本人としては、ある程度厳格に法則を学んで従わざるを得ませんが、あまりに規則のための規則に喧しくて、詩情を失っては元も子もありません。平仄の法則として、「二四不同二六同」の原則を(6)で話しました。しかしこれとても、すでに李白によって見事に破られています。

  両人対酌山花開,  両人 対酌すれば山花開く,
  一杯一杯又一杯。  一杯一杯又一杯。
  我酔欲眠君且去,     我は酔うて眠らんと欲す君且く去れ,
  明朝有意抱琴来。      明朝 意有らば 琴を抱いて来れ。

   「一杯一杯又一杯」は●○●○●●◎という破天荒の配列で、古今万人を惹きつけてきましたが、平水韻で読む限り「二四同二六不同」ですが、実際の発音に於いては、同じ音が繰り返すされる場合、正確に前音を踏襲するとは限りません。